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建設局職員が実践すべき行政DX~協力業者・地元住民との調整を効率化し、人手不足時代を乗り越える

建設局職員は、道路や橋梁などの公共インフラ整備を通じて地域の生活を支えています。

しかし現場では、人手不足による業務のひっ迫や、協力業者・地元住民との調整に膨大な時間がかかるなど、慢性的な課題が続いています。

一方で、多くの自治体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、こうした課題の解決を模索しています。この記事では建設局職員が現場の実態に合った形でDXを進め、調整業務を効率化する具体策を紹介します。

DXが建設局の「人手不足」を救う~現場に即した改善アプローチ

現状:属人化と非効率が職員の負担に

建設局では、ベテラン職員のノウハウに依存する業務が多く、異動や退職のたびに引き継ぎが難航します。加えて、協力業者や地元住民とのやり取りが紙や電話中心のままで、情報が分散しやすいことも問題です。

結果、人手不足の中で同じ作業を何度も繰り返す非効率な状況が生じています。

DXの導入で調整や説明時間を短縮

DXを進めることで、協力業者との工事進捗管理や住民説明のプロセスをデジタル化できます。たとえば施工計画表や図面をクラウド共有システムに格納し共有すれば、建設局職員・協力業者・本庁関係部署がリアルタイムで同じ情報を閲覧できるようになります。

このことにより確認作業や打ち合わせ時間が削減され、限られた職員でも複数の案件を効率的に進められるようになります。

「可視化」と「共有」で変わる協力業者との関係性

デジタルで築く信頼関係

専門の協力業者との信頼構築や連携力を高めるには、透明性とスピードが欠かせません。工事の進捗・契約履歴・安全管理記録などのデータを共有することで、トラブル防止と関係強化の両立が可能になります。

オンラインでこれらを一元化することで、プロジェクトの企画や設計、各種調整をしている行政職と、現場で施工管理に臨む技術職職員の認識がつながり、リスクの早期発見とリカバリ策の検討や再発防止につながります。

こうした情報のやりとりを、建設局職員のみならずその先にいる協力業者にも速やかに展開できるような場づくり、フローをつくりましょう。

協力業者の視点を取り入れるDX

DX推進は建設局だけで完結しません。協力業者側のITスキルや環境に応じて、使いやすいツールを選定することが大切です。ある自治体では、コミュニケーションアプリの連携機能を活用し、協力業者との連絡を簡略化することで現場の負担を大きく減らしました。

このようにデジタル化の目的を「効率化」だけでなく、「関係者全員が安心して働ける環境づくり」と位置づけることが、持続可能な行政DXの第一歩です。

地元住民との合意形成をスムーズに~DXで説明・理解のギャップを解消

デジタル説明会で理解を深める

工事現場近くに住む地域住民への説明は、建設局職員にとって最も時間を要する業務の一つです。近年は、オンライン説明会・3Dシミュレーション・VR映像を活用する自治体が増えています。

これにより、各種工事の完成イメージをわかりやすく可視化でき、対面説明の負担を減らしながら住民の理解を得やすくなります。

【一例】

佐賀県吉野ヶ里町(新庁舎建設説明会におけるVR活用、イメージ動画の制作)

横須賀市(3D都市モデル・VRアプリでの住民説明)

熊本県玉名市(浸水想定3Dマップ・VR体験を防災分野で活用)

情報発信のタイミングを見直す

DXは説明会だけでなく、情報発信の方法自体を変えます。工事スケジュールや交通規制情報をSNSや専用サイトで定期更新すれば、住民の不安やクレームを未然に防ぐこともできます。

「事後対応」から「事前共有」へ発想を転換することで、職員の精神的負担も軽減されます。

DXを定着させる3つのポイント~「現場発想」が成功の鍵

1. 現場職員が主体となるプロジェクト設計

システムを導入するだけでは、DXは定着しません。現場の声を反映し、職員自身が課題を洗い出し、改善策を提案する仕組みをつくることが重要です。「現場で使えるDX」を前提に設計することで、実際の効果が出やすくなります。

2. スモールスタートで成果を積み上げる

最初から大規模に導入せず、まずは一部の工事案件や部署で試行しましょう。たとえば、協力業者との情報共有をExcelからクラウド化する、苦情対応記録をデータベース化するなど、具体的な成功体験を積み重ねていくことで、職員全体の理解と参加意欲が高まります。

3. DXを「人を活かす仕組み」と捉える

DXは「人を減らす仕組み」ではありません。人手不足の中で、限られた人材をどう活かすかが目的です。DXを通じて、職員一人ひとりが付加価値の高い仕事に集中できるようにする――これが建設局におけるDX推進の本質です。

まとめ:DXは「効率化」ではなく「信頼の再構築」

建設局職員に求められるのは、単に新しいシステムを導入することではなく、協力業者・地元住民・職員同士の信頼をデジタルで支える仕組みを作ることです。

DXは現場を効率化するだけでなく、人手不足でも確実に成果を出せる組織体制を築くための土台となります。行政DXは「業務を楽にする」ためのものではなく、「地域と共に成長する建設行政」を実現するための手段である――この視点を持つことが、これからの時代に最も重要です。

建設業界向け業務改善アプリの開発体験研修~委託者としての勘所を掴む

Microsoft Power Apps(以下、Power Apps)によるアプリ開発体験を通じて、委託者としてITベンダーと円滑にコミュニケーションを取る力を養うことを目的としたプログラムです。

アプリ開発を体験するパートでは、現場の課題を踏まえ、難易度やコストの観点から「デジタル化すべきかどうか」を判断するケーススタディに取り組みます。

さらには、完成したアプリへの改善要望をもとに機能を変更するプロセスも実践します。現場側とITベンダー側それぞれの視点を理解することで、建設DXを進めるための適切なやり取りができるようになることを目指します。

本研修のゴール

  1. アプリ(システム)がどのようなものかイメージできる
  2. 業務をシステムへ落とし込むプロセスがわかる
  3. ITベンダーが困る依頼や、開発の難所を体得する

よくあるお悩み・ニーズ

  • ITベンダーの提案を判断できず鵜呑みにしてしまう
  • 建設業務の観点での要件定義が不十分で、設計でよく手戻りが発生している
  • ITに不慣れな現場メンバーが多いため、要望を言語化し依頼できるようになってほしい

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