部下の「承認不足」を解消して離職を防ぐ~管理職が今日からできる関係づくり、5つのポイント
「最近、部下の退職が続いている」「1対1の面談をしても本音を話してくれない」。こうした悩みを抱える管理職の声が後を絶ちません。
離職の背景には、給与やキャリアの問題だけでなく、職場での「承認不足」が深く関わっています。人は承認されることで「自分は必要とされている」「頑張りを見てもらえている」と感じ、そこに心理的な安心感と職場への愛着が生まれます。反対に承認が欠如すれば意欲は低下し、離職リスクは高まります。
本記事では、部下の承認欲求を満たし、行動変容を引き出すための5つのポイントに加え、離職を防ぐ具体的なコミュニケーション手法を日常の実践に落とし込んで解説します。
1.部下の承認欲求を正しく理解する
承認欲求とは、「自分の努力や成果を認められたい」という根源的な心理的欲求です。職場においてこの欲求が満たされない状態が続くと、モチベーションの低下を招き、最終的には離職につながる恐れがあります。
例えばある営業チームでは、顧客データの更新や整理を毎日丁寧に行っていた新人社員Aさんがいました。しかし、上司からの反応がほとんどなく、「自分の努力は評価されていない」と感じていました。そこで上司が1対1の場面で「細かいデータ整理まで見てくれて助かっている」と伝えたところ、Aさんの表情は明るくなり、翌週からの提案活動にも以前より積極的に取り組むようになったという事例があります。
重要なのは、部下の性格や価値観に応じた承認を行うことです。人前で称賛されることを好む部下には会議で取り上げる、控えめな部下には1対1で具体的に努力をねぎらうなど、個々に合わせた対応の使い分けが求められます。
2.毎日の声かけで「認める」を習慣化する
承認は特別な場面だけでなく、日常の些細なやり取りの中で積み重ねることが大切です。
小さな成果も見逃さず言葉にする
例:Bさんの資料作成スピードが上がったことを上司がすかさずキャッチし、「短時間でこれだけ丁寧にまとめられて助かるよ」と伝える。これによりBさんは自身の成長を実感し、モチベーション向上につながりました。
行動を具体的にほめる
例:「データ分析の細かい部分まで確認してくれたおかげで、クライアントへの報告がスムーズに進んだ」と具体的に伝えます。自分の努力が組織の成果にどう貢献したかが明確になり、部下の自信になります。
「プロセスを見ている」ことを示す
例:普段目立たないCさんが丁寧な顧客フォローを行っていたことに対し、「そういう細かい対応、ちゃんと気づいているよ」ということを伝えます。部下は「自分をしっかり見てくれている」と安心感を抱きます。
こうした日常的な承認の蓄積こそが、心理的安全性と信頼感を醸成する土台となります。
3.1対1面談で本音を引き出すテクニック
部下の本音を理解するためには、面談における質問の質や雰囲気づくりが鍵を握ります。
オープンクエスチョンを活用する
例:「最近の仕事で困っていることは?」と問いかけ、部下が具体例を話しやすい状況を作ります。この質問を受けたDさんは、「顧客への提案資料作りに時間がかかりすぎている」と正直に打ち明けることができ、上司と共に改善策を考えるきっかけが生まれました。
傾聴の姿勢を徹底する
例:相槌や言い換えを用いて理解を示し、部下が安心して話せる空気を作ります。上司が話を遮らず「それは大変だったね」と受け止めたことで、Eさんは面談後も積極的に相談を持ちかけるようになりました。
感情にフォーカスする
例:「仕事をしていて、やりがいを感じた瞬間は?」と質問し、心理的な満足感を引き出します。Fさんはこの問いに対し、自分の工夫が顧客に喜ばれた経験を語り、承認欲求が満たされる体験をしました。
4.フィードバックの質を高め、信頼関係を深める
承認は単に褒めるだけでなく、成長を促すフィードバックとして伝えることで効果を発揮します。
事実に基づき具体的に伝える
例:Gさんが作成した提案資料について、「構成が分かりやすく、提案意図が伝わりやすかった」と即時にフィードバック。Gさんは自信を深め、次回以降も質の高い資料作成を継続しました。
改善点は未来志向で伝える
例:「ここのグラフを見やすくすると、次はもっと良くなる」といったように、過去の失敗の指摘ではなく、未来への期待として伝えます。
タイミングを逃さない
例:成果が出た直後に伝えることで、承認の効果は最大化されます。納品後すぐにフィードバックを受けたHさんは、その達成感を持続させたまま、高い熱量で次の案件に取り組みました。
5.チーム全体で承認文化を醸成する
1対1の承認だけでなく、チーム全体でお互いを認め合う文化を作ることも重要です。
会議や朝礼で成果を共有・称賛する
例:その週に最も頑張ったメンバーを定例会議で称賛する時間を設けます。Iさんは他のメンバーの努力を知ることで刺激を受け、チーム内に切磋琢磨する雰囲気が生まれました。
メンバー同士で感謝を伝える仕組みを作る
例:チャットツールで「ありがとうカード」を送り合うなど、日常業務の中で自然と承認が循環する仕組みを導入します。
管理職が率先して行動で示す
上司自らが日々の行動で承認を示し続けることで、部下もその重要性を理解します。やがて同僚間でも自然と承認し合う文化が形成されていきます。
こうした取り組みにより心理的安全性が高まり、部下は安心して意見を発信できるようになります。結果として、チーム全体のエンゲージメント向上と離職率の低下が実現します。
管理職が「承認」を意識すると、職場はどう変わるのか
「褒めることが大事」「承認しましょう」と言われても、半信半疑な管理職の方もいるかもしれません。しかし、実際に部下の承認欲求を理解し、声かけを変えることで、職場には連鎖的にポジティブな変化が生まれます。
承認は強力な離職予防策になる
第一に、部下の心理的安心感が高まります。「自分は見てもらえている」「ここにいていい存在だ」という実感が、指示待ちや消極的な姿勢を減らし、自律的な行動を促します。報告・相談の頻度も上がり、1対1面談でも本音が出やすくなるため、管理職は部下の不安や不満を早期に察知し、離職の芽を事前に摘むことが可能になります。
ハラスメントリスクの低減
日頃から承認の土台がある職場では、注意や指導も「期待の裏返し」として前向きに受け取られやすくなります。「人格を否定された」という誤解が生じにくく、指導がスムーズに行動改善につながるため、結果としてハラスメントリスクの低減にも寄与します。
「承認」の積み重ねが、組織を強く安定させる
承認が行き交う職場では、チーム内の信頼関係が強固になり、助け合いや意見発信が活発化します。その結果、「人間関係」を理由とする離職が減少し、組織全体の安定と定着率向上という大きな成果につながるのです。
(管理職向け)離職防止研修~部下との良好なコミュニケーションを考える
本研修では、社員の離職防止をコミュニケーションから考えます。離職理由に人間関係があがることも多く、離職防止には職場でのコミュニケーションは重要な要素となります。
相手への気づかいや親切さが職場でもたらす効果を、自身の経験を振り返る演習を通じて改めて考えます。また、管理職から誤った自己開示になってしまっていないかや、部下のほめ方、声のかけ方を演習を通じて確認していきます。指導の面では、ハラスメントをしないための適切な指導をケーススタディを用いて考えていきます。
研修の最後には、職場全体の風土づくりについても考え、離職を防止するために部下との日頃のコミュニケーションのあり方を学ぶ内容となっています。
よくあるお悩み・ニーズ
- 職場全体として離職が増加している
- 上司と部下とのコミュニケーションがうまくいっていない
- 管理職に職場づくりや部下指導について学んでほしい
本研修のゴール
- 職場での相手への気づかい、親切さの効果に改めて気づく
- 自己開示の仕方、部下のほめ方を学ぶ
- ハラスメントにしないための指導方法を身につける
- 意見を発信しやすい職場づくりのポイントを学ぶ
セットでおすすめの研修・サービス
部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る
本研修では、部下とのコミュニケーションの仕方を工夫することで、どのように心理的安全性を高めていくのか習得します。
言いたいことを伝えるためのアサーティブコミュニケーション、本音で話せる環境を作るための1対1面談の活用方法を実際によくあるケースをもとに実践的に学びます。研修の最後には、自分のチームの心理的安全性を高めるための具体的な方法を検討していただきます。
部下コミュニケーション向上研修~1対1面談を通した部下育成支援
職場を構成する社員の年齢層や雇用形態が多様化したことにより、社員個人の事情や制約に合わせたマネジメント・指導が求められてきています。そのようなマネジメント・指導を実現させるためには、定期的な1対1面談を通して、社員1人1人と時間をかけて話し合うことが重要です。
本研修では、1対1面談の意義、進め方を理解した上で、面談で取り上げるべき内容(自部署の目標や方向性、部下の働き方、体調、人間関係の悩み)を習得します。
管理職向け従業員エンゲージメント向上研修~働きがいのある職場づくりでチームの活性化をはかる
チームの活性、生産性向上、ひいては離職防止への一手として「従業員エンゲージメント」が注目されています。
本研修では管理職のみなさまに、部下のエンゲージメント向上の3つのポイントと具体的な方法をお伝えします。働きがいのある職場をつくり、チームの活性化を目指します。











