インソース グループ営業統括室

若手のやる気を引き出す鍵は「ジョブ・クラフティング」~仕事の目的を問い直して成長の実感を生み出す

「最近の若手はすぐに辞めてしまう」「仕事に情熱を感じていない」そんな声を耳にしたことがあるかもしれません。

最近の若手には本当に「やる気がない」のでしょうか。実は、「やる気の源泉」が上司世代とまったく違う場所にあるだけかもしれません。

本記事では、今の世代の若手が仕事の意味を自ら再定義してやりがいを見出す方法「ジョブ・クラフティング」について事例を挙げながら解説します。

変わるモチベーションの源泉~違う価値観でやりがいを見出す

かつては「出世」「報酬」「競争」が、社員のやる気を支えるキーワードでした。しかし、Z世代を中心とする若手社員にとっては、そうした価値観は必ずしも響きません。

彼らが重視しているのは、「人とのつながり」「社会への貢献」「自分らしさの発揮」の3点です。言い換えれば、「何のために働くのか」「自分の仕事が誰の役に立っているのか」という「意味」を感じられなければ、やる気を維持しづらいのです。

このような世代に対して、従来の「頑張れば報われる」「成果で評価する」だけの指導では、心に届きにくくなっています。では、どうすれば若手が自らの仕事にやりがいを見出し、主体的に働けるようになるのでしょうか。その答えの一つが、「ジョブ・クラフティング(Job Crafting)」という考え方です。

ジョブ・クラフティングとは「やりがいの再発見」

ジョブ・クラフティングとは、自分の仕事の意味や役割を自らの手で再定義し、やりがいを再発見することを指します。

例えば、あるテーマパークの清掃スタッフの例が有名です。ただ掃除をこなすだけでなく、ゲストに声をかけたり、ほうきで水を使って地面にキャラクターの絵を描いたりすることで、自分の役割を「清掃係」から「ゲストを楽しませるキャストの一員」と捉え直し、主体的に仕事を広げています。

こうした発想の転換は、一般企業でも十分に可能です。ジョブ・クラフティングの実践によって成果を上げた、3つの事例をご紹介します。

ジョブ・クラフティングの実践事例

ジョブ・クラフティングは、単に仕事を効率化する手法ではありません。若手自身が主体的に仕事の意味を再定義し、やりがいや成長を実感できる環境をつくるための「力」です。

通信会社・営業サポート(Aさん)

日々のデータ入力業務を単調に感じていましたが、データから顧客の利用傾向が見えることに気づき、自ら分析表を作成して上司に提案しました。

その結果、営業チームが新たなプラン提案に活用でき、成約率が向上。「どんな仕事でも付加価値を生み出せる」と実感し、社内で評価される存在へと成長しました。

カスタマーサポート(Bさん)

日常的なクレーム対応にやりがいを見出せずにいましたが、内容を記録・分類し、改善提案レポートを作成して経営会議に提出。FAQや応対スクリプトの刷新につながりました。

クレーム件数が減少し、Bさんもリーダー候補として抜擢されるなど、主体的な行動が成果となって表れました。

ソフトウェア開発・プログラマー(Cさん)

与えられたバグ修正を「単純作業」と捉えていましたが、「これを解決すればユーザーの使いやすさが向上する」と意識を変え、自ら改善案を設計チームと共有するように変化しました。

タスク管理の効率化やコードの修正案(リファクタリング)も提案し、チーム全体の開発スピード向上に貢献しました。

ジョブ・クラフティングの発想のポイント2点

このような発想はどうすれば生み出せるのでしょうか。ポイントは、自分の仕事を俯瞰して見直すことと小さな工夫を意識して加えることの2点です。

発想のポイント① 自分の仕事を俯瞰して見直す

「この作業は何のために行っているのか」「自分の仕事が果たす価値は何か」を考えるだけで、単調に見えていた業務にも新しい意味を見出すことができます。

発想のポイント② 小さな工夫を意識して加える

報告書をグラフ化したり、分析結果をチームで共有するなど、ほんの少しの工夫でも、仕事の影響力は大きく変わります。さらに、周囲と協力して意味を広げることで、個人の取り組みがチーム全体の成果に結びつきます。最後に、小さな成功体験を振り返ることで、自己効力感を高め、次の主体的な行動に結びつけることができます。

自分で仕事の意味をつくる

このプロセスを繰り返すことで、若手社員は「ただの作業者」から「自分で仕事の意味をつくるプロフェッショナル」へと変わります。上司は、その変化を後押しする支援者として、社会性や関係性、自主性を意識した関わり方を心がけることが、若手のモチベーションを引き出す鍵となります。

「ジョブ・クラフティングの実践事例」の背景~上司の声掛けと承認

ジョブ・クラフティングを実践する若手社員の行動を後押しする背景には、上司の具体的な声掛けや承認があります。ただ「よくやった」と伝えるだけではなく、行動の価値を言語化し、次の挑戦を示すことが、主体性を引き出す大きなポイントです。さきほどの事例から、その具体的な実践例を3件紹介します。

通信会社・営業サポート(Aさん)

入力データの中から顧客の利用傾向を発見し、自ら分析表を作成して改善提案を上司に持ち込みました。このとき、上司は単に承認するのではなく、Aさんに「この分析視点は面白いね。営業チームにも共有してみようか。来週の会議で発表してみてほしい」と声をかけました。

この声掛けによって、自分の工夫が組織に価値を生むことを実感し、主体的に提案を重ねるようになりました。上司は成果だけでなく、分析の工夫そのものを承認し、次の行動の場を提示することで、Aさんの行動意欲を高めたのです。

カスタマーサポート(Bさん)

日常的なクレーム対応の内容を整理して改善案を作成し、会議で提案しました。その際、上司はBさんに「具体的で実行可能な提案だね。これ、次回の新人研修でも紹介してみよう。教育担当にも共有して、改善の輪を広げよう」と伝えました。

この承認では、提案内容の価値を具体的に認めると同時に、次の行動や成長の場を示しています。この声掛けにより、Bさんは自分の行動が組織全体に影響を与えることを理解し、モチベーションが大きく向上しました。

ソフトウェア開発・プログラマー(Cさん)

与えられたバグ修正タスクを単純作業と感じていましたが、ユーザー体験を意識して改善提案を作成しました。その際、上司はCさんに「この修正案はユーザー視点がしっかり入っていていいね。次の会議でチームに紹介して、みんなの改善につなげてみよう」と声をかけました。

この承認では、単に成果を褒めるのではなく、行動の価値を言語化し、次の挑戦の場を具体的に提示しています。このような声掛けが積み重なることで、Cさんは自分の仕事の意義を再確認し、主体的な行動を継続するようになります。

上司の声掛けと承認が成長する若手を「育てる」

これらの事例からわかることは、上司が若手の主体性を引き出すためには、行動や工夫の具体性を承認することです。そして、成果が組織やチームにどのように貢献するかを伝え、さらに次の挑戦の場を示すことが不可欠だという点です。日常業務の中での小さな改善や工夫も見逃さずに認めることで、若手は単なるタスク処理者ではなく、自ら仕事の意味を再定義し、主体的に行動するメンバーへと成長していきます。

ジョブ・クラフティング研修~目の前の仕事をやりがいのある仕事に変える(1日間)

ジョブ・クラフティングは、やらされ感のある仕事を「仕事の捉え方」「仕事のやり方」「人との関わり方」の3つで捉えなおすことにより、やりがいのある仕事に変えるアプローチです。

本研修では、若手~中堅社員を対象とし、自分の仕事をこの3つの枠組みで考え、再定義することにより、仕事の取組み姿勢をより前向きにすることを目指します。また、仕事のやり方の創意工夫・改善案の検討を通じて働く個人の主体性を引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上します。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 気が乗らない仕事や退屈だと感じる仕事がある
  • 分業やマニュアル化により、仕事の成果が見えづらくモチベーションが低下している
  • 若手・中堅社員のワーク・エンゲージメントを高めたい

本研修のゴール

  1. 自分の仕事が誰にどのように役立っているか(=仕事の意義)の検討・自己分析を通じて、仕事を前向きに捉えるための考え方を学ぶ
  2. 仕事を円滑にしたり、効率を上げたりするために現場で取り組むことのできる「創意工夫」を、受講者同士で意見を出し合いながら発見する
  3. 周囲との関わり方の見直しにより、チームワークを向上し、仕事の充実度を高める
  4. 自分の仕事を「仕事の捉え方」「仕事のやり方」「人との関わり方」の3つの観点で振り返り、今後取り組むことをまとめ、実践計画を作る

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セットでおすすめの研修・サービス

部下のやる気の引き出し方研修~ジョブ・クラフティングで「やりがい」を見出す

かつては、「出世」や「報酬」がモチベーションの源泉であり、「競争」はやる気において不可欠な要素だと考えられていました。

しかし今の若者にとっては、「職場の関係性」や「仕事の社会的意義」といったものの方が重要な要素と捉えていると言われます。こうしたイマドキの仕事観と親和性が高い「ジョブ・クラフティング」という考え方をベースに、若手のやる気を引き出す考え方と手法をお伝えします。

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中堅社員向けジョブクラフティング研修~目の前の仕事が、やりがいのある仕事に変わる

任せられる仕事が増えると、業務の忙しさからだんだんと仕事をこなすようになってしまい、自身のこれからのキャリアや仕事の意義を改めて考える機会が減ってしまいます。

特に職場の人数が少ないなど一人当たりの負担が多くなりがちな職場では、目の前のことしか見えなくなってしまいがちです。研修では、仕事の振り返りや自身の役割を考えるだけでなく、自身の仕事について深く掘り下げます。仕事の意義や今後できる工夫を演習で考えながら、自分の仕事を自身で面白いものにしていくための考え方を学んでいただきます。

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