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心理的資本とは希望(H)・自信(E)・回復力(R)・楽観性(O)の4要素。「HERO」が組織を成長に導く

多くの組織が人材不足に直面し、イノベーション創出の必要性が高まる中で、個々の「人の力」が重要な経営資源として再認識されています。

ビジネスを取り巻く環境変化の激しい現代では、従業員一人ひとりが前向きに仕事に取り組むための「心理的資本」を育むことが、組織の持続的な成長に不可欠です。

心理的資本とは、希望・自信・回復力・楽観性が生み出す心理状態

心理的資本とは、目標達成に向けて前向きな行動を促す、個人のポジティブな心理状態を指します。これは、単なる精神論ではなく、測定可能で開発可能な、具体的な経営資源と捉えられています。

心理的資本を構成する4要素「HERO(希望・自信・回復力・楽観性)」

心理的資本は、頭文字をとって「HERO」と呼ばれる4つの要素で構成されています。

  • Hope(希望): 目標達成への強い意欲を持ち、その道筋を見出す力
    例:
    ・プロジェクトが納期に遅れそうなときに、メンバーの調整や納期の再検討などの解決策を考え実行する
    ・「3年後にチームで最も信頼される営業担当者になる」という目標を立て、その目標を達成するために商材知識の習得や、毎日の日報で自身の課題を明確にするなど、具体的な行動計画を立てて自律的に取り組む
  • Efficacy(自信): 目標達成に必要な能力を自身が持っているという確信(自己効力感)
    例:
    ・初めて取引する顧客へのプレゼンテーションでも、「以前同業種の顧客から受注した経験から、業種の課題に合わせた説得力のある説明ができる」と信じ、積極的に商談に臨む
    ・後輩指導を任されたときに、これまでに自身が培ってきたノウハウをもとに自信をもって指導に取り組む
  • Resilience(回復力): 困難や逆境に直面しても、それを乗り越え、立ち直る力
    例:
    ・希望していた部署とは異なる、全く経験のない部署へ異動になったときに不満を抱えるのではなく、新しい環境で自分のスキルを広げるチャンスだと前向きに捉え、新しい業務に意欲的に挑戦する
    ・心血を注いで完成させた提案が、顧客から厳しい言葉で却下されたときに、自分の努力がすべて否定されたと落ち込むのではなく、今回のフィードバックは顧客の真のニーズを理解する良い機会だと捉え、すぐに改善案の作成に取りかかる
  • Optimism(楽観性): 成功を信じ、前向きな姿勢を保つ力
    例:
    ・期末の目標を達成できなかったときに「今回はダメだったが、この経験を分析すれば次は必ずできるはずだ」と信じ、具体的な改善策を考え始める
    ・チームの主力メンバーが異動し、業務負荷が増えたときに「もうこのプロジェクトはうまくいかない」と諦めるのではなく、「これを機にチーム全体のスキルアップをはかろう」と前向きに捉え、新しい役割分担や効率化を提案する

これらの要素は単独で機能するのではなく、互いに関連し合い、相乗効果を生み出します。

たとえば、高い「希望」は具体的な行動を促し、「自信」はその行動の質を高めます。「回復力」は失敗からの立ち直りを可能にし、その経験がさらなる「楽観性」と「自信」を育むといった、ポジティブな循環が生まれます。

心理的資本が高い従業員は、熱意を持って仕事に取り組むことができ、それが結果として高いパフォーマンスにつながります。これは、目標達成意欲の向上、ストレスへの耐性、困難を乗り越える力といった側面でワーク・エンゲージメントを高め、生産性向上や離職率の低下に寄与します。

モチベーションやワーク・エンゲージメントとの違い

「モチベーション」は、特定の行動を促す一時的な動機付けや意欲です。外部からの報酬や評価によって高まることもあれば、時間とともに変動することもあります。

また、「ワーク・エンゲージメント」は、仕事への熱意や没頭、活力を感じる心理状態そのものを指します。

一方「心理的資本」は、これらの状態を生み出すための「源泉」や「内的な資源」です。心理的資本が高い状態であれば、モチベーションが一時的に低下しても、それを乗り越える力が働き、仕事への熱意(ワーク・エンゲージメント)も自然と高まります。つまり、心理的資本は、モチベーションやワーク・エンゲージメントを維持・向上させるための土台となる、より根本的な力なのです。

外部環境の不確実に対応し、変化に強くなるための組織戦略は「人的資本」「社会関係資本」から「心理的資本」へ

かつて、組織の成功は知識やスキルといった「人的資本」、そして人脈やネットワークである「社会関係資本」に依存すると考えられていました。しかし、外部環境が不確実になるほど、個人の内面的な強さが組織の競争優位性の源泉となります。

心理的資本は、人的資本や社会関係資本を最大限に生かすための土台となる、より根源的な資本です。DXのような変革を成功させるうえでも、従業員一人ひとりの変化への適応力や挑戦意欲、失敗を恐れない回復力は不可欠です。

心理的資本を育む具体的な2つの方法は、目標設定と内省

心理的資本は、意識的な取り組みによって向上させることが可能です。

希望(Hope)を持つ~目標設定

明確な目標を設定し、それを達成するための具体的な行動計画を立てることで、希望はより確かなものになります。目標を数値化し、達成度を客観的に測ることで、達成への確信も高まります。

自信(Efficacy)をつける~成功体験の積み重ね

目標達成の経験を積み重ねることで、自己効力感が高まります。目標は、小さなものでも構いません。成功体験を振り返り、「自分にはできる」という確信を育みましょう。

回復力(Resilience)と楽観性(Optimism)を身につける~考え方の切り替えトレーニング

失敗を否定的に捉えるのではなく、なぜ失敗したのか、次にどう生かすかを多角的な視点で考える訓練をすることが有効です。この思考の転換が、困難な状況でも前向きな姿勢を保つ楽観性と、失敗から立ち直る回復力を養います。

組織が成長を続けていくために、従業員一人ひとりの心理的資本を育み、最大限に発揮できるような環境を整備する

心理的資本は、個人のパフォーマンス向上に直接的に貢献するだけでなく、組織全体の生産性や創造性を高めるうえでも重要です。目標設定や自己効力感の向上を組織が支援するとともに、心理的安全性を高め、従業員が安心して挑戦できるための土台づくりが求められます。

VUCAの時代において、組織が生き残り成長し続けるためには、従業員一人ひとりが内なる「HERO」を育み、最大限に発揮できるような環境を整備することが必要です。

部下のキャリア開発支援研修~先を見通し、離職を防止する

心理的資本を開発するためには、部下のキャリア支援が欠かせません。

本研修では、部下のキャリアゴールを考え、先を見通すためのツールとなるキャリアマップを作成します。作成したマップをもとにキャリア面談に臨み、部下のモチベーション向上と離職防止の実現を目指すプログラムです。

本研修のゴール

  1. なぜ部下のキャリア開発支援が求められるのか理解する
  2. 部下の価値観や理想を汲み取り、本人に合ったキャリアゴールとマップを作成できる
  3. 部下のモチベーションを高める面談の仕方を身につける

よくあるお悩み・ニーズ

  • 早期離職を防ぐために何をすべきか、具体的な方法を知りたい
  • 1対1面談を実施しているが、思うような効果が出ていない
  • 上司として、自信をもって部下のキャリアを支援できるようになってほしい

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セットでおすすめの研修・サービス

レジリエンス研修~しなやかにストレスと向き合い、回復力を身につける

レジリエンス(resilience)とは「精神的回復力」のことを指します。

レジリエンスを身につけることで、ストレスと上手に付き合い、困難を乗り越え成長することができるようになります。自分と向き合いながら感情コントロールの仕方や自尊感情・自己効力感の高め方を学びます。

>公開講座の詳細はこちら

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>動画教材の詳細はこちら

心理的安全性を高める研修ラインナップ

心理的安全性とは、「メンバー一人ひとりがチームに対して気兼ねなく発言できる、自然体でいられる環境・雰囲気」を指します。

心理的安全性を高めることで、クリエイティブな発想が出やすい、主体的な行動を促しやすい、若手が成長しやすい、活気が生まれるなど、組織全体のパフォーマンスを高めます。

>心理的安全性を高める研修ラインナップはこちら

エンゲージメント診断

従業員エンゲージメントの向上を目指して、組織課題を可視化するアセスメントです。従業員と組織の満足度を定量的に調査することで、どの対象にどのような施策を講じればよいのかを考える際の基礎情報として活用することができます。

人的資本経営や健康経営をはじめ、様々な視点で企業価値向上が求められる昨今、従業員エンゲージメントにつながる組織課題の可視化は、非常に重要な施策となってきます。

>エンゲージメント診断の詳細はこちら

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